ぺろぺろ速報

主にけいおん!関連のSS・VIP・声優・アニメetc.. 個人的に好きなものまとめ。

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紬「唯ちゃんを誘拐しました」

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 22:03:50.92 ID:rj9Qiwb60
 8月12日。
 私、琴吹紬は友人の平沢唯を拉致・監禁しました。

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/01/04(月) 22:05:16.08 ID:BSERHDBz0
通報しました





3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 22:06:22.78 ID:rj9Qiwb60
 きっかけはリーマンショックでした。
 相次ぐ株価の大暴落は私のパパが経営する会社も襲い、
 栄華を誇った我が家もみるみるうちに斜陽族と化しました。
 パパはつい最近までそのことを教えてくれなかったのですが、
 執事の斎藤が解雇されたのでこれ以上黙っていることはできなかったようです。


4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 22:11:19.70 ID:rj9Qiwb60
 一生償っても返済しきれない借金ができてしまったと告げられました。
 あまたある別荘は借金の返済に宛てられ、私の家も売る羽目になり、
 夏休みになってからは街から離れた山奥の小屋でひっそり暮らしていました。


5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 22:13:18.54 ID:rj9Qiwb60
 軽音部のみんなにはイギリスに留学するからと嘘をつきました。
 思えば、それが崩壊の始まりだったみたいです。


6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 22:17:20.97 ID:rj9Qiwb60
 極貧生活は苦痛以外の何物でもありませんでした。
 いつも放課後に飲んでいたあの紅茶でさえ、今となっては高嶺の花です。


8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 22:19:35.21 ID:rj9Qiwb60
 最初はピクニック気分で楽しく過ごそうと努めていたのですが、
 連日続くパパの狼藉やママの愚痴、それらにいてもたってもいられなくて、
 体育座りのまま耳をふさぐばかりでした。
 いつも琴吹家としての自覚を持ち、おしとやかに振る舞おうと胸に言いつけますが、
 私の腕はわなわなと震えています。


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 22:20:57.35 ID:rj9Qiwb60
 こんなはずではありませんでした。
 私はただ、普通の家庭で普通に育ち、愛らしい友人たちと
 普通の学校生活を送りたかっただけなのです。
 ようやく見つけた放課後ティータイムこそ、私の本当の居場所でした。
 正直に言えば琴吹の家などどうでもよかったのです。
 ただ、放課後ティータイムへの復帰よりもまず、目先のお小遣いが私たちには必要でした。


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 22:21:59.14 ID:rj9Qiwb60
 てっとり早く金を稼ぐため、パパやママとそこらへんの子供を誘拐し、
 身代金をいただくという原始的な犯罪計画を企てました。
 すでに解雇した斎藤も私の命令でこの計画に協力してくれました。
 パパが適当にひっかかりそうな子供を町で誘拐し、
 その両親が支払いに応じるまで私が面倒を見るのです。


14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 22:23:48.96 ID:rj9Qiwb60
 私はすでに気が触れていたようです。
 心の底の暗い私がささやき続けていました。
 疲れきっていた私は、悪魔になることも魅力的に感じてしまったようです。
 
 できればかわいい子がいいな、なんて。
 
 パパはその日のうちに近所で女子高生を拾ってきました。
 公園でぼんやりしていた女の子と聞いて、まさかそれが唯ちゃんだったとは夢にも思わず、
 少女が小屋の二階にある私の隠し部屋に運ばれるまで、ずっとわくわくしていました。


15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 22:25:23.06 ID:rj9Qiwb60
 目隠しされ、口にはガムテープが貼られていましたが、
 桜高の制服を着ていたのですぐに唯ちゃんだとわかりました。
 それまで失っていた罪悪感が一気に芽生えてきました。

 私はいったい何をしているんだろう。


17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 22:26:19.20 ID:rj9Qiwb60
 パパにこの子が友人であることを告げようとしましたが、
 いざ本人の目の前に立つと、いままでとは違うものすごい形相で、
 私は怖くなって何も言えませんでした。
 誘拐にはあれだけ賛成したのに、今更撤回する気なのか。
 そう叱るパパの顔が目に浮かんだのです。


19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 22:27:30.44 ID:rj9Qiwb60
 唯ちゃんは寝息を立てて、すやすやと眠っていました。
 一気に憔悴してしまった私とは違い、まだ幼くて小動物のように愛らしい友達がそこにはいました。

 無邪気で、浮き世の景気など微塵も考えてなくて、頬に触れるとほんのりと暖かい。

 いつしか私の胸はときめいていました。


21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 22:28:25.89 ID:rj9Qiwb60
 この子を普段から独り占めにできる憂ちゃんがうらやましいなと考えると、
 心に芽生えたはずの罪悪感がまた消えていくようでした。
 私の心のためにも、少しは唯ちゃんを私のものにしてもいいだろうと思うようになったのです。


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 22:29:37.70 ID:rj9Qiwb60
唯「ふにゃあああ」
 唯ちゃんの目隠しを取り外すと、口をもごもごさせつつ、彼女は目をさましました。
 プリンのような頬に髪の毛が一本張り付いていて、何度首を振っても離れません。
 ぺろりとなめてあげたい衝動を抑えつつ、私は唯ちゃんに語りかけました。
紬「今日からしばらくの間、唯ちゃんは私のものですよ」


23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 22:30:59.36 ID:rj9Qiwb60
 唯ちゃんはしばらく眉毛の前のお星さまをくるくると追っているようでした。

唯「あれれ、私どうしてここにいるの?」

 どうやら誘拐されたことに気づいていないようです。
 両手両足がしばられているのに、いつものまったりとした表情を崩しませんでした。


24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 22:32:14.43 ID:rj9Qiwb60
紬「私が誘拐したのよ」

唯「ゆーかい? ムギがここにいるってことは、ひょっとしてここはイギリス!?」

 唯ちゃんの表情がぱあっと明るくなりました。

唯「でも、イギリスにしてはちょっと暗いかなあ」


26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 22:35:49.21 ID:rj9Qiwb60
紬「ごめんなさいね、元々イギリスには行ってないの。
  お金が足りなくてそれどころではなかったんです」

唯「ふへぇ、そうなんだぁ。近頃あんまり景気がよくないみたいだからね、大変だよね」

 目を点にしながら語る唯ちゃん。
 どう頑張っても唯ちゃんに自分が身代金目的の人質であることをわからせることは難しいようです。

唯「ねぇねぇ、私ちょっとお腹すいちゃったみたいなんだけど……」


27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 22:36:43.16 ID:rj9Qiwb60
 誘拐した後、残った最大の問題は食糧でした。
 しばらくは私の食費をきりつめてなんとかするしかありません。

紬「少し待っていてくださいね」

 飢え死にさせるわけにはいきません。
 私は自分のために買っておいた昼食を唯ちゃんに与えることにしました。
 ファミリーマートという珍しい店で買っておいたおにぎりがあったのです。


28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 22:38:46.11 ID:rj9Qiwb60
紬「さきほど、コンビニという場所でおにぎりを買ってきました。
  ごぼう入りとたくあん入り、どちらがいいですか?」

唯「たくあん!」

 即答した唯におにぎりを差し出しましたが、
 腰の後ろでしばった両腕を使えないことに今更気づいたようです。

唯「あれれ、なんだか腕がしびれちゃったみたい。ギー太弾きすぎちゃったかな、
  てへへ。ムギちゃん、開けてくれるかな?」

紬「いいですよ」


32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 22:41:34.19 ID:rj9Qiwb60
 私はビニールに包まれたおにぎりをしばらく見つめました。
 シールを取り除いても剥ける気配がなかったので、
 私はハサミを取り出して端っこを切ろうとしたのです。

唯「そうじゃないよ!」

 唯が少しばかり声をあらげました。私はびくっとしました。

唯「一番上に赤いピラピラがあるじゃない。おにぎりを回しながら
  あれをぴぃぃぃぃぃぃって引っ張って、両端をつまみながらくぱぁって開けるんだよ。
  おにぎりを取り出す瞬間、海苔がくるりんとなって面白いんだよ」

 恥ずかしながら私はおにぎりの開け方を知らなかったようです。
 よく見たらラベルの裏に簡単な注意書きが記されていました。
 唯ちゃんの言うとおりおにぎりを取り出すと、彼女はきゃっきゃっと嬉しそうに身をよじりました。


34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 22:43:43.94 ID:rj9Qiwb60
唯「あーん」

 満面の笑みを浮かべながら唯ちゃんは大きく口を開いていました。
 両手が使えないのではしょうがないので、私がおにぎりを唯ちゃんの口に運びました。
 唯ちゃんは美味しそうにおにぎりを食べました。
 彼女の頬に米が一粒ついたので、指でつまんで自分の口に入れました。

唯「おいしーい」

 まさか120円のおにぎりでこんなに喜んでくれるとは思いませんでした。
 お米だってぼそぼそで、中身も着色料がすごいのに。


36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 22:45:12.61 ID:rj9Qiwb60
唯「私、コンビニのおにぎり好きなんだよ。なんかね、たまに食べたくなるんだ」

紬「そうですか。気に入ってもらえてよかった」

唯「食べたら寝るね、おやすみ~」

紬「えっ、もう寝るの?」

唯「だって眠いんだもん」

 大きなあくびを一回、唯ちゃんはいつの間にかその場で眠ってしまいました。
 試しに唯ちゃんの髪をくるくる回してみても反応しません。


37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 22:46:44.12 ID:rj9Qiwb60
 予想外の事態でした。
 唯ちゃんに嫌われても仕方ない、生活のためだからと覚悟を決めていたのに、
 唯ちゃんの行動は普段とまるで変わらなかったのです。
 お金のためなら悪女にだってなるつもりでした。
 思わぬ形で出鼻をくじかれたのです。

 私は頭を抱えました。
 身代金がとどくまで私はいったいどのように振舞えばいいんでしょう。
 いつもどおりでいいんでしょうか。
 狭い屋根裏の汚い部屋には、私と唯ちゃんのみです。


38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 22:49:09.06 ID:rj9Qiwb60
 唯ちゃんをこんなに間近で見るのは初めてのことでした。
 肌はとてもきめ細かく、まるで赤ちゃんのようです。

唯「すぅ……えへへっ、ふぐぅ……」

 たまに良くわからないいびきをかきます。

 そのまま翌朝までぐっすりでした。
 私はずっと唯ちゃんを観察しながら眠れない夜を過ごしました。


39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 22:51:35.46 ID:rj9Qiwb60
 8月13日。

 身代金交渉が難航しているようです。
 私が軽音部の連絡網から電話番号をパパに教えたのですが、
 そもそも自宅に電話がかからないようで、
 パパはついに受話器を投げつけると諦めて不貞寝してしまいました。
 こんなに短気な姿を見るのは初めてです。

 ママに相談したところ、パパはもう精神的に滅入っているからということで、
 身代金交渉は私が努めることになりました。
 緊張しますが仕方ありません。
 生活費のためです。


43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 22:55:06.05 ID:rj9Qiwb60
 パパの関連会社、楽器部門の関係で開発したボイスチェンジャーをこの間入手したばかりでした。
 これを使えば問題ないでしょう。
 私は思い切って唯ちゃんの家に電話しました。
 耳に触れる受話器が震えているのがわかりました。

『もしもし、平沢です』

 快活な声が聞こえてきました。

紬「言うことを聴きなさい。さもないと、平沢唯の命はありません」


44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 22:57:08.15 ID:rj9Qiwb60
『へっ?』

紬「おたくの平沢唯さんを誘拐しました」

『ええーーーーっ! というかどなたですか?』

 それは普通教えないでしょう。

紬「返して欲しければ今すぐ五千万円を用意しなさい。
  警察、他者にこのことを告げたらただちに平沢唯を殺害します」

 カチャリという音がしましたが、受話器が置かれたわけではありませんでした。
 コップでも落としたのかもしれません。

『それで、その五千万円は……』

紬「明日、N駅東口のコインロッカー39番に入れなさい。扉を閉めて鍵を抜き取り、
  それを西口の11番に入れなさい。使用中であればその隣でも可とします。
  以上の動作を明日の午前中までに行うこと」


45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:00:17.63 ID:rj9Qiwb60
 しばらく受話器の向こうで沈黙が続きました。
 動揺しているのでしょう。
 頃合を見計らい、

紬「わかりましたか?」

 と尋ねました。すぐに返事がありました。

『あ、はい。五千万円ですね。了解しました~』

 すんなり理解してくれたようです。
 この反応だったら、もうちょっと高い金額を請求すればよかったかもしれませんが、
 それは追々考えましょう。


46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:01:36.15 ID:rj9Qiwb60
 静かに受話器を置きました。
 こちらの電話番号は向こうに通知されていないはずです。
 問題ないでしょう。

 終わると疲労感が一気に襲っていました。
 体調が優れません。
 重い足取りで部屋に戻ると、唯ちゃんは嬉々とした表情のまま床に転がっていました。


47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:03:10.32 ID:rj9Qiwb60
唯「あ、ムギちゃん! なんか、元気なさそうだよ、大丈夫?」

紬「ええ、なんともないですよ」

 そうは言うものの、私は唯ちゃんがやはり侮れない人だなと感じていました。
 自分が誘拐されたことはわからないのに、変なところでカンがいいのです。
 私が精神状態不安定なのも見抜いています。
 うかつなことはできません。


48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:05:06.93 ID:rj9Qiwb60
紬「それよりも退屈じゃないですか? ずっとそのままの格好で」

唯「うん、私ごろごろするのが大好きだから大丈夫!」

 監禁生活は案外、平沢家の日常と大差ないのかもしれません。
 私はまだ唯ちゃんに嫌われていないのだと納得し、ほっと胸をなで下ろしました。


50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:06:16.13 ID:rj9Qiwb60
唯「ゆーかいって気楽でいいね。この部屋はエアコンがなくても涼しいし。
  ほら、私ってエアコン苦手だからちょうどいいんだ」

紬「そうですね……」

 私は複雑な心境の間で揺れていました。
 自分はもっと罪の意識を持つべきなのかもしれません。
 しかしこの状態では、いつもの放課後ティータイムとさほど変わりません。
 まったりとした時間が流れていきます。


52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:07:54.62 ID:rj9Qiwb60
唯「でも、こうしてムギちゃんと二人っきりになるのは珍しいかも。普段はみんなと一緒だから」

紬「そうですね」

 今度は心を込めて言いました。

唯「せっかくだから楽しいことをしたいな」

紬「例えばどういうことですか?」


54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:09:51.48 ID:rj9Qiwb60
唯「ツイスターゲームとかどうかな?」

紬「ついすたー?」

唯「あ、でも私苦手なんだ。うちで憂とやるとね、いっつもバランス崩して憂の上に倒れちゃうの。
  それから、重なったままずっと憂を抱きしめてるの。
  結局ゲームはどうでもよくなって、二人でずっとごろごろしてる」

 どういう趣旨のゲームかよくわかりませんが、私は唯ちゃんと
 抱きしめ合っている姿を想像して真っ赤になってしまいました。


55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:11:30.05 ID:rj9Qiwb60
唯「どうしたの、ムギちゃん顔赤いよ」

紬「ご、ごめんなさい! つ、つい……」

唯「つい?」

紬「つい……ツイスターは持ってないんです」

唯「残念だね……。家から持ってくるのも面倒だし、まあこうしておしゃべりしているのもいいかな?」

紬「そうですね」

 変な想像が邪魔をして、その後の会話はままなりませんでした。


57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:14:15.50 ID:rj9Qiwb60
 8月14日。

 いよいよ身代金受け取りの日です。
 パパやママはもう方々を駆け回ったので、精神的にも肉体的にも限界が来ていました。
 琴吹家の女として私がしっかりしないといけません。
 
 カツラを被り、サングラスをかけてすっかり変装しました。
 普段の軽音部の活動で変装すること自体は慣れていましたが、行動を伴うのは初めてのことでした。


58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:16:15.69 ID:rj9Qiwb60
 N駅の西口コインロッカーへ向かいます。
 気のせいでしょうけれども、誰かに尾行されている感覚が捨てられず、胸の鼓動が高鳴っていました。
 ついこの間までの生活では五千万円なんて大したことがなかったのに、今となっては大金です。
 女子高生一人には荷が重いのです。
 
 指定した11番のコインロッカーにはちゃんと鍵が入っていました。
 とりあえず第一関門は突破です。


59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:17:40.89 ID:rj9Qiwb60
 地下連絡通路から東口に周り、39番のロッカーを探します。
 普段から駅はあまり使わないので少し迷いましたが、なんとかたどり着くことができました。
 ガチャっと大きな音がして扉が開きました。
 中には黒いアタッシュケースが入っています。


60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:18:20.56 ID:rj9Qiwb60
 私はそれを引きずり出すと、大事に胸に抱えました。
 五千万円ってどんな重さなんだろうと心配になりましたが、
 いざ持ってみるとなんとか自分で運べる程度の重さでした。
 私は少しほっとしました。
 また斎藤を呼び出さなくてもなんとかなりそうです。


62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:19:25.75 ID:rj9Qiwb60
 見回したところ、周囲に警察はいないようです。
 そもそも駅前には人自体が少なく、このぶんでは覆面警察官もいないでしょう。

 私は大急ぎで山小屋まで戻りました。
 パパが久しぶりに笑顔を浮かべて待っていました。
 ママが頭をなでてくれました。
 二人が私の到着よりもお金の到着を待ち望んでいたのはわかっていましたが、
 私もそうだったので仕方ありません。


64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:21:01.42 ID:rj9Qiwb60
 夢が膨らみました。
 五千万円あれば、律ちゃんに教えてもらったゲームセンターや
 駄菓子屋でいつまでも遊ぶことができます。
 おにぎりだっていくらでも買えます。
 高級な食品など要りませんでした。
 私は早く、普通の生活が送りたくてたまらなかったのです。

 しかし、アタッシュケースを開けてみたら事態は急変しました。
 五千万円がこんなに軽いなんてと油断していた私が悪かったのです。


65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:21:56.81 ID:rj9Qiwb60
 一万円札の中央には福澤諭吉の代わりに山中さわ子の学生時代が描かれていました。
 傍らには「見本銀行券」と記されています。
 アタッシュケースの表面はすべて見本銀行券で、それ以外は単なる新聞紙の切り抜きでした。


66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:23:02.80 ID:rj9Qiwb60
 パパとママは私を激しく叱責しました。
 私は別に間違ったことはやっていない、平沢家の判断だったんだと力説しましたが、
 私の言うことを聞く耳など持っていませんでした。
 私は涙を流しながら大声を張り上げました。


68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:24:30.52 ID:rj9Qiwb60
紬父「どうすればいいんだ!」

紬「まさかこうなるとは思っていなかったんです……
  ちゃんとお金を入れてくれているとばかり思っていました……」

紬父「約束通りあの人質を殺すしかないだろう!」

紬「それだけはやめて下さい! お願いします!」

紬父「どうして人質を庇うんだ! 
   お金を稼ぐために俺はあいつを誘拐したんだぞ、わかってるのか?」


69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:26:13.49 ID:rj9Qiwb60
紬「殺したところでお金は手に入らないでしょう? もう一度脅迫するしかないです!」

紬父「今度はうまく行くのか?」

紬「保証はないですが……なんとかやってみます」

紬父「次、失敗したら人質は殺すぞ」

 頭がどうかしてしまったパパの表情を前に、私は涙も枯れて立ち尽くすしかありませんでした。
 私はひとりぼっちでした。


70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:27:23.17 ID:rj9Qiwb60
 どうしてこんなことになってしまったのでしょう。
 唯ちゃんを殺すわけにはいきません。
 かといって、このままの生活を続けていたのでは気が狂って死んでしまいます。
 もうすでに心のどこかがぽっかりと空いてしまったようでした。

 うまく動いてくれない足を引きずりながら二階の隠れ部屋に戻りました。
 唯ちゃんは私の怒声を耳にすることなく、安らかな表情を浮かべて眠っていました。
 唯ちゃんが天使のように見えました。
 そのとき、さきほど枯れたはずの涙が急激にこぼれてきたのです。


72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:28:59.18 ID:rj9Qiwb60
 唯ちゃんの両親は五千万円を用意してくれませんでした。
 お金を工面する面倒と我が子の生死を天秤にかけたとき、仕方のない判断を下したのでしょう。
 家には優秀な妹がいて、いくら本人は普段からぼうっとしているだけの生活を送っているからって、
 こんな結末を迎えるのは悲しすぎます。

 唯ちゃんは私たちの大切な仲間です。


74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:30:49.76 ID:rj9Qiwb60
 私の両親からは単なる身代金目当てのモノ扱いを受け、本人の両親からは見捨てられ、
 唯ちゃんは周囲の悪意に全く気づくことなく、手と足の自由を奪われたまま、
 あくまでもすやすやと眠っています。
 全ての人間の原罪を背負って十字架にかけられているのです。

 唯ちゃんを救えるのは私しかいないと思いました。
 そう思ったとたん、私はふいに彼女を抱きしめました。
 とてつもなく、彼女が愛おしくなったのです。


76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:32:04.79 ID:rj9Qiwb60
唯「ふにゃ~?」

 大粒の涙が唯ちゃんの胸元にこぼれていきました。
 泣きわめく私に対し、寝ぼけ眼の唯ちゃんは、まだまどろみの中をさまよっているようです。
 その表情がとてもかわいらしくて、私は再び強く彼女を抱きしめました。

唯「どうしたの、ムギちゃん……」


77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:32:59.96 ID:rj9Qiwb60
 唯ちゃんが不憫で泣いていたとは言えませんでした。
 私がふがいなくて泣いていたとは言えませんでした。
 ただ唯ちゃんが大好きで大好きでしょうがないんだということを何度も何度も語りかけました。

 唯ちゃんも彼女なりに事の異常さは理解してくれたようです。


79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:34:06.54 ID:rj9Qiwb60
唯「私もムギちゃんが大好きだよ。だけど、あんまり泣くと服が濡れちゃうよ。
  というか、もう濡れちゃってるよ」

紬「ごめんなさい! でも、でも……」

唯「これって、ゆーかいと何か関係があるのかな?」


80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:36:41.78 ID:rj9Qiwb60
 相変わらず唯ちゃんは鋭いです。

紬「ごめんなさい。私は唯ちゃんが大好きで大好きでたまらないから、
  唯ちゃんを誘拐したの。誘拐はいけないことなんです。
  唯ちゃんといろんなことがしたくて、唯ちゃんを私のものにしたかったのです」

 壊れた蓄音機のように戯言を繰り出す私に対し、唯ちゃんが投げかけた台詞は意外なものでした。

唯「いいよ」

 それから唯ちゃんはにっこりと笑いました。

唯「私を好きにしてもいいよ。私もムギちゃん大好きだから」


83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:37:49.75 ID:rj9Qiwb60
 一瞬、私の涙が止まりました。

唯「二人でいけないことしようよ」

 どうやらまだ唯ちゃんは「誘拐」を勘違いしているようですが、
 私は救われた気持ちでいっぱいでした。
 今の唯ちゃんはとても神々しく見えました。

紬「本当に、いいんですか?」

唯「うん!」


84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:38:46.58 ID:rj9Qiwb60
 了承はとったものの、いざ彼女を目の前にすると何から始めればいいのかわかりませんでした。

紬「ごめんなさい、服濡らしちゃったわね。気分悪いだろうから、今脱がせるわね」

唯「うん」


87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:39:34.27 ID:rj9Qiwb60
 ブレザーを脱がせ、ワイシャツのボタンを一つずつ外していきました。
 唯ちゃんの繊細すぎる肌が露わになります。
 ブラジャーのホックに手をかけると、そこまでは濡れてないよ~と
 少し顔を紅潮させながら唯ちゃんはつぶやきましたが、
 私はためらうことなくそれを取り去ってしまいました。
 唯ちゃんの申し訳程度についている乳房がピンク色に染まっていました。


88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:40:46.84 ID:rj9Qiwb60
唯「ゆうかいって、少し恥ずかしいかな……」

紬「とてもかわいいですよ」

唯「えへっ、ありがとう!」

 私の征服欲が何にも勝っていました。
 それまでは疲れきっていた体も、みるみるうちに謎の活力で満たされていったのです。
 私はこれを唯ちゃんエネルギーと名付けました。
 今後、正しい語彙利用を心がけていく次第です。


90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:42:23.48 ID:rj9Qiwb60
 こんな経験初めてでした。
 大好きな唯ちゃんは私と振動を共にし、
 互いに重なり合ったまま何度も何度も頂点まで上り詰めました。
 私は行為が終わってからもずっと唯ちゃんのお尻をぺろぺろと嘗めたり揉んだりしていました。
 唯ちゃんはその度に小鳥のような声をあげます。

 本来なら私は男の子をこうやって愛するべきなのかもしれません。
 けれども、いつの頃からか私には女の子と一緒になりたい願望があることに気づき、
 しばらくの間自分が尋常ではないんじゃないかと悩んでいましたが、
 高校に入ってあの軽音部に所属すると、なんだかそんな些細な悩みはどうでも良くなってきたのです。


92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:44:10.64 ID:rj9Qiwb60
 私は唯ちゃんをもう一度強く抱きしめました。
 どうやら一線を越えてしまったようです。
 一度原罪を背負ってしまった身分である以上、
 これ以上何をしてもあまり変わらないような気がしてきました。

紬「唯ちゃん、ずっと一緒にいようか」

 私の問いに唯ちゃんは少し戸惑いを見せたようですが、やがて納得したらしく、
 天真爛漫を絵に描いたような表情でうん、と頷きました。
 唯ちゃんは私のものです。
 もう誰にも渡しません。


94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:45:15.68 ID:rj9Qiwb60
 8月15日。

 再び平沢家に犯行予告を出しました。
 向こうは謝りながら今度こそはちゃんと用意すると念を入れてくれました。
 しかし、ちゃんとお金が届いてしまったら、唯ちゃんを手放すことになります。
 私はひそかに、また見本銀行券が入っていればいいなといけないことを考えていました。
 こんなこと、絶対パパやママには言えません。

 お金の準備のために、引き渡しは3日後としました。
 その間は絶対に唯ちゃんと遊んでいられるのです。
 本当はもっと期間をのばしたかったのですが、パパとママが許してくれませんでした。


95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:46:42.29 ID:rj9Qiwb60
 8月16日。

 お金が底をつきそうです。
 私の分の食糧はほとんど唯ちゃんにあげてしまっていたので、
 私は空腹を通り越して新たな境地に達していました。
 唯ちゃんにコンビニのおにぎりをあげるととても喜んでくれます。
 私はその笑顔が見たくて、自分の食糧などどうでも良くなっていました。
 ただ、確実に何かが私の体をむしばんでいたのは事実です。
 唯ちゃんエネルギーでなんとかなればいいのですが。

 幸いにもまだ警察には連絡が行っていないようです。


96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:48:22.92 ID:rj9Qiwb60
 8月17日。
唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん
唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん
唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん
唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん
唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん
唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん
唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん
唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん
唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん
唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん
唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん
唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん
唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん
唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん唯ちゃん


97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:50:27.71 ID:rj9Qiwb60
 8月18日。

 とうとう受け渡しの日です。

 私は拘束されたまま寝ている唯ちゃんの頬にキスをし、例の変装をして街に繰り出しました。
 以前と同じ場所です。


98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:51:58.82 ID:rj9Qiwb60
 西口のコインロッカー11番を開けると、
 そこには東口コインロッカー39番の鍵が入っていました。
 これで間違いありません。
 サングラスを通して見た町並みは霞んで見えました。
 暗く淀んでいます。

 駅の連絡階段を降りていきました。
 壁には落書きがなされ、蛍光灯がチカチカと消えかかっている東西連絡通路です。
 私が最後の曲がり角を進み、東口に出る階段をあがっていると、真上から声をかけられました。


100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:53:42.95 ID:rj9Qiwb60
 どきりと胸が弾みました。
 目に入った光景が信じられなくて、サングラスを外して再び見ましたが、
 日光が強すぎてよくわかりません。

??「ほら、ムギちゃん!」

 平沢唯は階段の上から私に声をかけていました。
 私にはそれが救世主にしか見えませんでした。
 目を何度もこすります。

紬「唯ちゃん、どうしてここに……」

??「うふふ、待ってましたからね」


102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:54:37.50 ID:rj9Qiwb60
 いったいどういうことでしょう。
 さきほど山小屋でちゃんと両手両足が緊縛されているのを見てきたばかりなのに。
 笑顔はいつものまま、唯ちゃんは確かにそこに存在していました。

??「平沢唯を誘拐した犯人はあなたですね、琴吹紬さん!」


103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:55:49.68 ID:rj9Qiwb60
 階段の上の唯ちゃんはそう叫びました。
 私はすっかり混乱してしまいました。

??「あまり混乱させちゃってもしょうがないですね。こうすればわかります?」

 唯ちゃんはそう言うと、ポケットからゴムを取り出して自分の髪を縛りました。


105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:56:58.46 ID:rj9Qiwb60
 私は自分を恥じました。
 唯ちゃんとそうじゃない人の見分けがつかなかったなんて。

憂「妹の憂です。姉がお世話になってます。うちに電話をしてきたのはあなたですね?」

 そういえば以前、憂が唯ちゃんに変装して軽音部にやってきたのを思い出しました。
 まんまと引っかかってしまいました。


106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:57:50.38 ID:rj9Qiwb60
 けれども、納得いかないことが多々あります。

紬「ど、どうして……私が電話したってわかったのですか?」


107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/04(月) 23:58:58.04 ID:rj9Qiwb60
憂「誘拐犯から電話があった後、大急ぎで音声サンプルを録音したのです。
  パソコンで音素を分析し、これが琴吹産業の最新ボイスチェンジャーで
  音声を編集したのだとわかりました。
  琴吹産業のホームページに変換サンプルが掲載されているのでわかります。

  けれども、これ発売が来週なんですよ。持っているのはきっと、
  琴吹産業の関係者しかいないと思って、怪しいなと思ったんです」


108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/05(火) 00:00:10.88 ID:gPT3M2Dc0
 なんという妹でしょう。
 姉とは大違いです。

紬「でも、証拠は……」

憂「琴吹さん。あなたは何気なく我が家に電話をしましたよね?」

紬「そうですけど……それがなにか?」


110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/05(火) 00:01:20.02 ID:gPT3M2Dc0
憂「通常、誘拐犯は人質から自宅の電話番号を聞き出して犯行電話を流します。
  けれども、お姉ちゃんは自宅の電話番号も覚えていない子なんです! 

 携帯電話も自宅に置きっぱましで、生徒証にも面倒臭がって電話番号書いていないんで、
 そもそもうちに電話が掛かってくること自体、
 お姉ちゃんの知り合いであるとしか考えられないんです。
 いくらお姉ちゃんを拷問しても自宅の電話番号なんて出てこないですから」


112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/05(火) 00:02:39.78 ID:gPT3M2Dc0
 私は名探偵平沢憂の推理に畏れをなしていました。自分が愚かでした。


114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/05(火) 00:03:48.08 ID:gPT3M2Dc0
憂「始めは何かの冗談だと思ったんです。
  
 多分お姉ちゃんの知り合いがいたずらしているんだろうなあって。

 けれども本当にお姉ちゃんが帰ってこなくなったので、

 とりあえず周りに心配をかけちゃいけないなと思って、

 私はお姉ちゃんの変装をして周囲に平沢唯の消失を感づかせないようにしました。

 それと同時並行で犯人を探っていったのです。そのとき琴吹産業が事実上の経営破綻に追い込まれ、

 社長が行方不明になったというニュースを聞いて、もしやと思ったんです。

 これは本当に大変なことになったのではないでしょうか、とね」


116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/05(火) 00:05:05.46 ID:gPT3M2Dc0
 平沢憂は再び髪留めを外すと、また唯ちゃんみたいになって話を続けました。

憂「でも、私はあなたを信用しました。きっと、お姉ちゃんのことは殺さないだろうって。
  きっと大事に保管してくれているんだろうって。違いますか?」


117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/05(火) 00:07:11.72 ID:gPT3M2Dc0
 私は何も言えませんでした。
 ただ、小刻みに震える私の様子から、少なくとも殺戮には至っていない
 ということは感づいてもらえたはずです。


119 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/05(火) 00:08:10.89 ID:gPT3M2Dc0
憂「このことを私の父さん、母さんはおろか、警察、軽音部のみなさんもまだ知らないんです。

 私がお姉ちゃんのアリバイを作っておきましたから。

 だから、今からならやりなおせます。こんな犯罪なんてやめてください。

 琴吹さんはあくまでも清純なお嬢さんでいて欲しいんです。

 お金に関してはわからないですけど、軽音部のみんなで協力できると思います。

 さわちゃんにも相談しましょう。だから、お姉ちゃんを返して下さい」


121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/05(火) 00:10:26.93 ID:gPT3M2Dc0
 どうしてそこまで私に気を配ってくれるのかわかりませんでした。
 おせっかいにもほどがあります。
 ここまで、私は悪女になろうとしたのに。

 結局悪者にはなりきれないまま、平沢憂は私をふだんの
 ふわふわな現実へと簡単に引き戻そうとしていました。


123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/05(火) 00:12:04.04 ID:gPT3M2Dc0
 私は選択肢の上に立たされていました。
 このまま憂に甘えて、両親を説得すれば再び元の生活には戻れます。
 お金はないですけれども、憂の言うとおりなんとかなるかもしれません。

 しかし、私は唯ちゃんと一線を越えてしまっていたのです。
 憂が先ほど言った、お姉ちゃんを返して下さいという一言がいつまでも脳裏に引っかかっていました。


124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/05(火) 00:12:53.58 ID:gPT3M2Dc0
 唯ちゃんは私のものです。


125 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/05(火) 00:14:11.49 ID:gPT3M2Dc0
 そして、私は目の前に立っているもう一人の唯ちゃんを凝視しました。
 唯ちゃんとそっくりで、聡明で、かわいい子です。
 憂がいれば、山小屋で孤独な唯ちゃんも退屈しないでしょう。
 いっそうのこと、三人で楽しめばいいのではないでしょうか。

 たった今思いついた名案に、私は震えるほどすがりつきたくなりました。


127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/05(火) 00:15:57.19 ID:gPT3M2Dc0
 私は憂ちゃんに声をかけました。

紬「それじゃあ、今からお姉ちゃんのところに案内しますね」

憂「うん!」

 憂ちゃんの無垢な表情を見て、私はこれからのことがとても楽しみになりました。


おしまい。


130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/05(火) 00:17:51.08 ID:FRwjZEt6P
ムギの口調があれだけど乙


131 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/01/05(火) 00:19:39.38 ID:sXBj/T/D0

にえきらない部分もあったけど唯ちゃんのかわいらしさに感動した
誘拐唯と紬のほのぼのをもうちょっと掘り下げて欲しかったかな
ついでに憂紬唯の生活も見たかった
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